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「スイミング・プール」映画レビュー あらすじと私的感想

近日上映予定の映画ポスター3点

モネです、今日もXMT_from_TYO !! です。 猛暑が落ち着いたと思ったら台風の季節。
このブログ書き終えたら夜中の散歩をするつもりだったけど外は土砂降り。まぁ明日にするか。

さて今回のブログは映画レビューでフランソワ・オゾン監督の「スイミングプール」です。
ググると解説がいっぱい出てきますが、いずれも空想と現実についての考察。主人公がミステリー作家であることがポイントとなり、観る人が自分の解釈で楽しめる映画です。

「スイミング・プール」予告編 動画

  制作年:2003年
  制作国:フランス・イギリス合作
  時 間:102分
  原 題:Swimming Pool
  配 給:ギャガ・コミュニケーションズ

あらすじ 別荘で創作活動をすることになるサラ

イギリス人ミステリー作家のサラは、「ドーヴェル警部」シリーズで人気を博したものの、思ったように結果が出ず不調。出版社の編集長であるジョンの勧めでジョンが所有するフランスの別荘で執筆活動をすることとなる。訪れた先は観光地のような賑わいはなく、自然に囲まれた穏やかな土地だった。

別荘でのストーリー 自由奔放なジュリーとの共同生活

別荘で創作に取り掛かるサラだったが、ジョンの娘と名乗る若くて美しい娘ジュリーが現れ様子は一変。生真面目でつまらない女サラとは違い自由奔放なジュリー。夜な夜な男を連れ込むジュリーと反発しあうが、ジュリーの自由気ままな生き方に惹かれ、サラはジュリーを題材とした作品を書き始める。
こうして 別荘で出会った娘ジュリーとのひと夏の奇妙な生活がはじまった。

新たな展開 ジュリーが起こした殺人事件

サラとジュリーの距離は縮まり、ジュリーの母親が小説家だったことを知るサラ。母親が書いた恋愛小説を好まない父ジョンが原稿を燃やしてしまったことを聞かされる。
サラが不在の際、部屋に忍び込み自分を題材に小説を書いていることを知るジュリーはサラが気になっていた男フランクを別荘に連れ込む。サラの態度を気にして帰ろうとするフランクをその夜殺してしまったジュリー。サラは動揺するジュリーとともにフランクの遺体を庭に埋め隠蔽する。

ネタバレ含む イギリスに戻ってからのラスト結末

遺体隠蔽後、ジュリーが別荘を去る。サラはジュリーから母親の書いた小説を託され新作を書き上げる。
ジョンは新作を読むものの、関心はなく大した反応はなかった。全く予想通りの展開にサラは別の出版社と契約し発売にこぎつけていた。あらかじめサインした新作をジョンに渡し“お嬢さんにあげて”と言い残し編集部を去るサラ。入れ替わるように入ってきた見慣れぬ少女はジョンの娘、名前はジュリーではなくジュリアだった。

「スイミング・プール」の秀逸ポイント

この映画は別荘での二人の女性の共同生活、そこで起こる殺人事件など謎な物語となっている。
作家サラによる創作なのか現実の中に妄想が入り混じっているのか。。
ドラマのポイントはサラは推理作家であること。だからミステリーっぽく感じる。ミステリーっぽいから物語に引き込まれ妄想を意識しないで見ることができるんじゃないかと思う。
俺が思うに何が正解とかということではなく観ている人が、それぞれの解釈で楽しめば良いのではと思う。
そんな楽しみ方ができるところが、この映画の優れている点なのだろう。

成功と引き換えに失ったものに気づくサラ

サラは出版社の要請にあった作品を作り、その作品はシリーズ化しサラも出版社も成功したようだ。
出版社にとって大切な人気作家として売り上げを担ってきたのだろう。ただ最近は固定のファンはいるものの、目新しさはなく、年齢とともに出版社内で主力ではなくなってきた。
出版社としては挑戦的な作品よりも、固定客が喜ぶ作品を出版し、一定の利益が得ることを選択したのだろう。だがサラからすれば、作品について親身に考えてくれることはなく、扱いが悪くなっていったことを悟り、放り出される前に新しい路線を模索したいと考え別荘に向かったのではないかと思う。

解釈と考察 別荘とジュリーについて

サラの中には自身の成功に満足しながらも、少なからず犠牲にしたことがある。それが青春時代なんじゃないかな。身も心も作品に打ち込んできたから出版社の考えにショックは大きかったのだろう。その大きなショックがあったから大きな転換につながり、この関係変化によって別荘での創作活動、そしてジュリーを誕生させたのではないだろうか。つまり別荘もジュリーもサラの作った空想なんじゃないかと思う。

映画冒頭で出版社編集長のジョンから“フランスの別荘で執筆活動してみないか”との提案があった際、別荘にジョンが来ないことを知ったサラは不機嫌そうな表情をした。つまりサラの彼なんだなと推察できる。
編集長として彼としてつきあってきた人にまともに相手にされてないって思ったら辛いよね。だから自分自身を見つめ直し作品を作りたい、やりたかったけどできなかったことをしたいとの欲望が呼び起こされたのだろう。

その象徴が気分転換するための別荘であり、そこに登場する自由奔放なジュリーだったのだと思う。
よく言えば知的、でも男からは見向きもされない堅物女。弾けることもなかった。でも心の奥底では、おもしろおかしく生きてみたかったんじゃないかな。
走り抜けてきたサラは結婚もしていないし子供もいない。ジュリーは自身のやってみたかった青春であり、自分の子供みたいな存在でもあったんじゃないかな。

ミドル&シニア世代だからできたサラの選択

ジュリーのような自由な生き方に憧れていた。今まで投げ捨てたものからジュリーを妄想し、今の自分と羨ましいと思っていた生き方ジュリーと対峙し理解しあい、最後の手を振るシーンで二人はひとつになった。サラは小説の中で自分の人生を振り返り新たな人生を踏み出したんじゃないかと思う。

推理作家らしくミステリー風に仕上げ、自身の新たな船出にふさわしい作品を仕上げた。
ただ、一般的に考えてしまうと自分を振り返り新しい生き方を模索する年齢なのかということ。
これって現実と向き合っちゃうと考えようによっては、結構暗い話とも受け取れそうなんだよね。そんな辛さも感じつつも、それでも新しい道に邁進するサラの生き方はかっこいい。

人によっては、この年齢になって気がついたことで残酷さを感じる人もいるのかもしれないが、この年齢まで年を重ねているからこそ判断できたのだろう。何よりも人生100年とい言われる時代だからそんなに悲観的にならなくてもいいんじゃないかな。

自ら舵を切ってフリーになったサラ

俺が思うのは大半の人は気がつくことなく、定年を迎え、雇用を延長し、年金生活を始めるわけで、自分の意志で人生を歩んでいるのかどうかすらわからないような人ばかりな気がする

マニュアル通りの生き方とでもいうか。。特に今までの日本人なら、学校を卒業し、就職し自ら選択しているようにも見えるけど、実際は与えられた選択肢の中、ルートから外れることなく、目の前の道を歩かされているだけじゃないかって。選択という自由はあっても本質的な自由は手にしにくい環境なんじゃないかって。。ひとくちに「自由」といってもlibertyかFreeみたいな似て非なる問題がそこに存在すると思う。

結局、与えられた人生の中で生活し働き、がんばっていても、いずれどこかで閑職に追い込まれ、甘んじて受け入れるみたいな人生が大半なんじゃないかってきがする。

堅物女、サラがロマンス小説を書けるのだろうか?

サラの生き様について、色々書いてみて今更ながらではあるのだが、確かにサラって優秀だし努力家なんだろうけど彼女の生き方って手堅く、卒なくって感じ。だからクソ真面目でつまらない女。基本的に知性や知識とかはあるから一緒に酒を飲んでいても、それなりに会話は成り立つのだろうけど、本当に楽しく過ごせるかは疑問。あんまり遊んだこともないだろうし、なんか画一的だしね。サラの生き様とか書いた後にどうかと思うが、疑問に思うことがある。仕事人間みたいな彼女にロマンスなんて小説にできないのではないだろうか。そもそもロマンスなんて、どんなものかもわかっていのではないか。

そのことはジュリーから彼女の母親の手記を受け取り読み漁っている姿が、ロマンスに無縁な生活だったっことを端的に表している。
でも、そう考えると、書き上げた新作って本当に書かれたものだろうかって思ってしまう。つまりジュリーの母親の書いた文章を受け取った。それを元に新作を書き上げたということになっているだけで現実はどうなのか?ジュリーが空想なら母親の書いた小説も空想。ロマンスに縁のないサラに小説が書けるとは思えない。そう考えると、編集長ジョンから別荘の話があったところから編集部を後にしたサラがジュリアとすれ違うまですべてがサラが描いた新作だったのかも。。

サラの選択に共感!俺の生き方を省みる

出版社の態度をきっかけとしたかもしれないが、自分の人生を後悔しつつも、自身を見直すきっかけとし過去に失った新しい自分を生み出すサラの生き方は素敵だ。
俺も、大学卒業 → 平社員.退職 → アルバイト → 平社員,部長職,退職 → 契約社員,平社員,部長職,退職 → 業務委託&学校 → 平社員,退職 → 社長,事業譲渡 → アルバイトってな具合に上がったり下がったりの連続。ちなみにこれを英語で言うと“Life is a rollercoaster”というらしい。※簡単な自己紹介はこんな感じ

小学校の時、俺は18ヶ月に渡りいじめにあって死にかけたこともあった。いじめが世の中に存在しないと言われていた時代なので、大人は誰も俺の話を信じない。母親が買ってくれた新品の絵の具が全てカッターで切られた時、父親は“やられる方が悪い”と言ったくらい。転校初日に机の中漁られてやられたんだよね。まぁ、そんな経験があるから、子供心に思ったことは大人をあてにしてはいけないこと。基本的に自分以外の人間を信用しないこと。何よりも大人社会は権力のある者の意志と、それに迎合する一般人による多数決の世界であることを知った。くだらん人間に絡まないのが一番、一人で生きていこうと思ったんだよね。だからジョゼに共感したのかも。

そんな生き方しちゃったから困ったことはいっぱいある。変な奴としか思われないから、一般ルートに乗ることなく超不安定な生活をしている。でもよく考えてみたら、普通の人が経験できないような人生を歩んでいる。自分では俺の人生は一回転したと考えている。だから今は2回目の人生。
なので、サラが何歳であろうと彼女の生き方には共感できる。作家としてだけでなくこれからの彼女の人生の兆しを感じた。年齢や性別は関係なく、自身の行動が自身の生き方を変えることになるってことを教えてくれたとうかがわれる。どこまでが妄想であるかは、今更どうでもいい話であり、物語を通しサラの生き様を堪能できてよかったなぁ。
それを教えてくれたことがこの映画の見所なんじゃないかって思っている。

「スイミング・プール」の結びと感想

・観ている人それぞれの解釈で楽しめる上質なストーリー!
・サラ役のシャーロット・ランプリングさんの存在感
・静かで穏やかな別荘で起こる女の欲望と殺人事件
・きらめき波打つプールがミステリアスを演出!
・スタイリッシュ、オゾン監督の作品は凄い!

なんか書き始めたら、映画の冒頭の話を元に俺なりに空想したことを書き綴ってしまった。
別荘は実際に存在したのかもしれないし、妄想かもしれない。もしかしたら、編集長ジョンやジュリアの存在も新作の中の出来事だったりして。。

こんな想像をしながら楽しめる映画って知的好奇心をくすぐるよね!
そんな自分なりの楽しみ方ができる映画です。ぜひ観てみてください。モネの“「スイミングプール」映画レビュー あらすじと私的感想!” fm_TYO_w/_luv !! でした。

「スイミング・プール」作品概要

  監 督:フランソワ・オゾン
  脚 本:フランソワ・オゾン
  出 演:シャーロット・ランプリング
      リュディヴィーヌ・サニエ
      チャールズ・ダンス
      ジャン=マリー・ラムール

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