モネです、今日もXMT_from_TYO !! です。年が明けたと思ったら、あっという間に2月も半ば。今回は久しぶりに正月に見た映画「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」についてです。
「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」予告編 動画
制作年:1989年
制作国:アメリカ
時 間:112分
原 題:The Florida Project
配 給:クロックワークス
舞台はフロリダ州ディズニーワールドにほど近い安モーテル。そこに住み着くギャル風シングルーマザーのヘイリーと娘ムーニーの物語。っていうと年齢、性別関係なく楽しめる「夢の国 ディズニーランド」で想像をはるかに超える感動が待っているみたいな感じの物語!? ではなく、アメリカ貧困層をテーマにしたヒューマンドラマ。
ディズニーランドってみなさんよく行きますか?俺はディズニーランドがオープンした時を含め2回しか行ったことがない。ちなみにディズニー好きな人の足繁く通う理由の一つに“夢と希望が溢れてる”というのがあるらしい。では、この親子には夢と希望はあるのか?!
登場人物について
ムーニー
元気で明るい6歳の女の子。というとなんかいい感じだけど、イタズラ好きな困ったクソガキ。
ヘイリー
ギャル風シングルマザーでムーニーの母。露出高めの派手な服、知性や品性なんて存在しない。ちなみにギャルを英語で言うと“gyaru”つまり日本語でした!
ボビー
モーテル内で起こる厄介ごとにもちくちくと小言など言わず黙々と対応する頼りになる心優しい管理人。
あらすじ
モーテル「マジック・キャッスル』で二人暮らしをする定職を持たない母ヘイリーとムーニー。大人たちは厳しい現実に問題を抱え辛い社会に直面しているが、一方ムーニーは同じモーテルに住むスクーティ、隣のモーテル「フューチャー・ランド」に住むディッキーと3人で遊ぶ日々はまさにアドベンチャーって感じ。
ある日「フューチャー・ランド」に来た客“ステイシー”の車に2階から3人で唾を吐いた。いたずらに気づいたステイシーはモーテルに逃げ帰ったムーニーを追跡。そして管理人のボビーへ抗議。ボビーはムーニーの母ヘイリーに注意。悪びれた様子もないヘイリーだが、ムーニーたちに掃除をさせることに。しかし掃除をさせたものの反省の様子など皆無。ていうか反省どころかムーニーはステイシーの娘ジャンシーに手伝わせる始末。
そんな出会いではあったが、ヘイリーとステイシー、ムーニーとジャンシーは親しくなっていく。物語は子供たちが冒険のような日々を送る中、ヘイリーが職を失ったあたりから大きく動き始める。
タイトル「フロリダ プロジェクト~」っていったいどういう意味なのか?!
ググってみたら、ディズニー・ワールドの開発時におけるプロジェクトの名称らしいが、もう一つ別の意味がある。「プロジェクト」とは、低所得者用の公共団地。とのこと。以下引用です。
「プロジェクト」とは、アメリカの低所得者用の公共団地。日本語では「スラム地区」などと表現されることもある。というのも、プロジェクトには昔からネガティブなイメージがつきまとってきたからだ。薬物売買の温床、ギャング抗争、強盗、発砲などの凶悪犯罪の巣…。
引用元:「HEAPS MAGAZINE」【階級社会の最底辺、アメリカ低所得者団地「プロジェクト」で育つ、育てるということ】
映画の中で、この親子が住んでいるのは安モーテルでプロジェクトではないんだけど、このことが何を指しているのだろうか。この親子はプロジェクトに住むことができない低所得者の中でも最下層であるということらしい。
でも疑問が残る。モーテルの費用は月1,000ドル。だったら家賃くらい払えるのではと思ってしまうが、俺の調べ方が悪いのかもしれないが、どうやらアメリカでは貧困層が家を借りることができないらしい。要するに、日本の住宅セーフティーネット制度みたいなものがないようで、生活に困窮しているのに住むために大きな出費が嵩むという負のスパイラルが起きている。ゆえに毎日の生活の場を確保するために大きな支出が伴い、人生を立て直すことが難しい。
ダメ母!? ヘイリーについて
ヘイリーはどこから見ても母親らしさを微塵も感じさせない。露出の高い服からはみ出るタトゥー、髪は緑だし言葉使いも行動も、ただのイカれたバカ女。
ストリッパーをクビになった後は、定職に就くことなく紛い物の香水をディズニーワールドに来る客へ売って生活していた。
低所得者とはいえモーテルの住人たちは仕事をしているのだから、ヘイリーだけが仕事がないわけではない。おそらく朝から決まった時間に出社して…みたいなルールの中で生活できない人なのだろうね。だから定職に就けない、選択できる仕事がほとんどないのだろうなぁ。
まぁ、人ってやっぱり少なからず生まれながらにして人生が決まるということは否めない。本人の問題は大きいと思うし、努力も必要なんだけど、社会によってやり直しにくかったり、気が付いてからでは抜け出すことが困難なことだってある。
ヘイリーとムーニーは問題のある親子。プロジェクトにも住むことができず、モーテルに居つくしかない。ただ、そんな状況に陥ったのは果たしてヘイリーだけが悪いのか。。確かにヘイリーの周囲に対する態度は良くないし、生きるためとはいえ、彼女がしていることは許されないことかもしれない。
ムーニーについても同様で周囲の人々に常に迷惑をかける常識のない問題児。ヘイリーが育てたのだから当然といえば当然か。
そんな二人だから助けがないのかもしれないが、陥った状況から抜け出せない。生きていくためには、もはや手段は選べない状況にあったんだよね。とはいえ、物語の中盤でヘイリーとムーニーが水着で自撮りするシーンは、親子の楽しい時間でもあるけど、その後の展開が読めてしまって居たたまれない。
繰り返しになるけど問題児であることは間違いない。でもね、俺は思うんだけどヘイリーの無謀な言動とかって、なんか裏表が無く、ある意味純粋な感じがして憎めないだよね。選択肢がないゆえの大胆な行動は、きっと社会に対する窮屈さや反発もあるのだろうし。。少なくとも自分でやらかしたことについて責任を背負って生きているわけだから普通の人々よりもはるかに生き様はかっこいい。
そして何より素敵だなと思ったのはムーニーに対する愛情。二人で過ごす日々の生活や遊んでいる姿を目の当たりにすると素晴らしい親子だなって思ってしまう。厳しい現実とはいえ、いきつくとこまでいっちゃった感じのヘイリー。でも、決してムーニーに愚痴ったり、感情がコントロールできずに暴力を振るうなんてことはしない。ちなみに“愚痴る”を英語で言うと“to complain”って言います。
母親失格って思う人もいるかもしれないけど、愛情たっぷりにムーニーを育てる姿は心にしみる。日本人みたいに画一的に考えればダメ親子かもしれないが、でも、こんな友達みたいな家族の形があってもいいんじゃないかって思った。
秀逸ポイント1 映像が素晴らしい
以前紹介した、ブラウン・バニーは映像としての美しさが特徴的なんじゃないかと思うけど、このフロリダプロジェクトはカットとしての美しさがある。なにより子供の目の高さで撮影されていること。これがとても効いていて物語が超リアルに入ってくる。
背景の建物は左右のシンメトリー構造、かつ子供の目の高さを意識した重心の低い上下対象の構図によりバランスのとれた美しい映像が目を引く。
構図もさることながら色鮮やかな映像は圧巻。モーテルはパープルだし、ヘイリーのグリーンの髪は派手。青空に木々の緑、ディズニーワールドの存在や映像のポップで鮮やかなイメージと二人の厳しい現実が対照的に描かれている。
秀逸ポイント2 住人たちを温かく見守る管理人ボビー
淡々と管理人の仕事をするボビーは地味な存在ではあるけど、モーテルの住人たちを温かく見守姿はかっこいい。めちゃくちゃいいやつなんだよねボビーは。
問題児のムーニーとヘイリー親子に手を焼きながらも、いつも二人を気にかけている心優しい管理人なのだ。
ムーニー、ヘイリーの親子と厳しい現実社会の間にボビーを添えたことで映画の質はぐんと高まった。
安モーテルの存在意義から考えれば仕方ないんだけど、やはりどこか住人たちとの距離はあるようなきがする。当たり前だけど、仕事だからね。宿代が払えなければ追い出すしかないしね。そんな優しさや迷いなどの揺らぎも人間味が感じられる。物語終盤で、ヘイリー親子が引き離されるシーン。ボビーは階段でムーニーとすれ違い1階に降りてタバコを吸うのだけど、なんともやりきれない感じが表情や姿容に出ていて、ちょっと切ない気持ちになった。
結び
話はシンプルなんだが、ブログで書こうとすると書きたいことが多すぎて全然まとまらない。好きだから何度も観てはいるとはいえ、正月に観た際にこの文章を書いたらなんかいろんな話を書いてしまいよくわからない状態になってしまった。書きたいことが山ほどあって、とりとめのない文章になってしまい、ごっそり削ってみた。だから中途半端さは否めない。ってことで、やっと再編集してなんとか投稿。今まで書いたブログの中ではイマイチになっちゃった。
自分なりの生きる術で娘を守るヘイリー。この物語の主人公“ヘイリー”と“ムーニー”は過酷な現実の中、素敵な笑顔で日々を生き抜いている。この親子の生きる姿にグッとくる素晴らしい作品です。ぜひ、観てください。
ということで、モネの“「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」映画レビュー あらすじと私的感想”
fm_TYO_w_luv !! でした。
「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」作品概要
監 督:ショーン・ベイカー
脚 本:ショーン・ベイカー
クリス・バーゴッチ
出演者:ブルックリン・プリンス
ブリア・ヴィネイト
ウィレム・デフォー
ヴァレリア・コット