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船戸与一「虹の谷の五月」 俺の人生に影響を与えた3冊のノベル

路面に設置された古本屋の書棚の前を歩く男性の足

モネです、今日もXMT_from_TYO !! です。前回《俺の人生に影響を与えた3冊のノベル”にて田辺聖子さんの「ジョゼと虎と魚たち」》を紹介しましたが、いかがでしたか?
今回のおすすめ本はタイプは大きく変わりフィリピン・セブ島を舞台にした船戸与一さんの冒険小説「虹の谷の五月」です。

初めて「虹の谷の五月」を読んだ時、現実に打ちのめされることがあっても希望を捨てず、1人きりでも信念を通すことの大切さを改めて感じました。

本好きに読んで欲しい「虹の谷の五月」の作品概要

©集英社

出版社:集英社
文 庫:上464ページ
    下480ページ
連 載:「小説すばる」
期 間:1998年7月号から2000年3月号
受 賞:第123回直木賞

日本を代表する冒険小説家、船戸与一さんについて

船戸さんの作品はハードボイルドな冒険活劇。辺境地での精力的な取材をもとに書かれた作品はいずれもすごいボリューム。スケール感、読み応えのある長編が多いけど長さは全く感じさません。
また小説家としての活動の他、さいとう・たかをさん作の漫画、劇画作品である「ゴルゴ13」の原作にも外浦吾朗の名で参加しているそうです。

「虹の谷の五月」のあらすじ

フィリピン・セブ島に住む日本人の混血児「トシオ」が主人公の小説。日本人の父親はトシオとその母親を捨て、その後母親はエイズで死に、トシオはセブ島の田舎ガルソボンガ地区で祖父ガブリエルと暮らしていた。

トシオの住む村の奥深く入ったジャングルには円形の虹が出る谷「虹の谷」がある。かつて新人民軍の英雄だったホセはその「虹の谷」で今でも一人戦っている。
物語は「虹の谷」を中心にトシオの13歳から15歳までの5月に起きた話を年単位、3章の構成で少年から大人へ成長していく姿を描いている。

「虹の谷の五月」の登場人物

この物語はトシオが主人公だけど、トシオの周辺にいる人々が魅力的。かつての抗日人民軍の英雄だった祖父ガブリエル、虹の谷で孤独な戦いを続けるホセ。いずれも無慈悲な環境下においても誇りを失うことなく自重する智者。残忍な大人たちにさげすまれているトシオにとって自戒し正しく生きる人を目の当たりにできたことは本当に良かったし、だからいい育ち方をしたんだろうなと思う。そして、メグとの心の交流も。。。

「虹の谷の五月」の秀逸ポイント

両親のいないトシオがフィリピンの現実社会で生きるのはあまりにも過酷。そんな社会の底辺で生きるトシオに襲いかかる現実はとても切ないが、生々しい大人社会がトシオを大人へと成長させていく。
舞台となるガルソボンガ地区で起こる事件に巻き込まれる中、13歳のトシオは子どもっぽさもあれば、冷めてるというか大人っぽい一面を覗かせる。

物語が展開する中、トシオに理解を示す人たちは、見下され、踏みつけられ、命を絶ったり、現実社会に対し厳しさゆえに歩み寄り妥協するなど腹立たしさを感じることも。。まぁ現代日本で生きる私にとって、ガルソボンガ地区みたいな劣悪なコミュニティーはないから知らないけど、俺は子どもの頃ひどいいじめにあっていたからこの理不尽さに共感した。でもまぁ、こんな醜悪な環境下となると読んでいて嫌気がさしてきたこともあったけどね。

とはいえ、トシオが14歳,15歳の多感な年代でこのコミュニティーに身を置かれたことで辛く、傷つきながらも一転、急激に大人になっていく様は最後まで読んでよかったなと思わせること間違いなし。
大げさに思うかもしれないが別人じゃないかっていうくらいしっかりしてくるんだよね。やっぱりこの年代って一番変化があるのかな。そういえばエヴァンゲリオンの碇シンジや綾波レイ、まどマギのまどか、ほむらも年齢設定は同じ。涼宮ハルヒが学校に忍び込んだのも、花とアリスの出会いも確か同じ年齢じゃなかったっけ!?

「虹の谷の五月」の結び&感想

どんなに強い人でも理想を持ち続け、信念を貫くことは難しい。残念ながら現実社会に埋もれ、掲げた理想を見失いボロボロになってしまうことが大半なんじゃないか。でもどんなにアウェイな状況であっても希望を捨てず戦うことの大切さを「虹の谷の五月」で教えられた。

「虹の谷の五月」は、たとえ1人きりになっても、誇りや意地を持って生き抜く勇気を与えてくれる数少ない小説だ。
悲しい生い立ち、政情不安などやりきれない思いになってしまうが、スタインベックみたいな、つかのまの平和じゃなく未来を暗示するエンディングが描かれており、悲しい死もあるけど希望あふれる素敵な作品です。

長編ですが、あっとう間に読めてしまいます。
ぜひ読んでみてください!
ということでモネの“船戸与一「虹の谷の五月」 俺の人生に影響を与えた3冊のノベル” fm_TYO_w/_luv !! でした。

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