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「ドライビング Miss デイジー」映画レビュー 感想と人種問題

棚の上のアンティークな扇風機と映写機

モネです、今日もXMT_from_TYO !! です。やっと涼しくなりました。さぁ、食欲の秋です!
このブログに書いている映画レビューは、すべてコロナ自粛時に観たものばかり。時間があったから50本くらい観たかな。今日紹介する映画「ドライビング Miss デイジー」もその1本。

先日ブログで書いた《「ブラウン・バニー」映画レビュー あらすじと私的感想》にデイジーという女性が出てきたのでデイジーつながりで書いてみようかと思ったんだけど、この映画、公開時に観に行って以来、コミカルで、ものすごく好きな映画。

アカデミー賞を作品賞、主演女優賞、脚色賞、メイクアップ賞の4部門で受賞した名作です。デイジー役のジェシカ・タンディとホーク役のモーガン・フリーマンめちゃくちゃ素敵!

「ドライビング Miss デイジー」予告編 動画

  制作年:1989年
  制作国:アメリカ
  時 間:99分
  原 題:Driving Miss Daisy
  配 給:東宝東和

あらすじ 車の事故をおこしたデイジー

ジョージア州アトランタで独り暮らしをする未亡人のデイジー。冒頭、ガレージから車を出すシーンでアクセルとブレーキを踏み間違え車を壊してしまう。
見ての通り、確かにデイジーは高齢者であることは間違いないが、矍鑠(かくしゃく)として大抵のことは自分でやりきっちゃう、しっかりもののおばあちゃん。だから事故を起こしたことは、周囲が思っている以上に本人にとってショックな出来事。

とはいえ、この自動車事故を重視し、工場経営をする息子プーリーはデイジーが車の運転をすることのないよう、新車のハドソンを購入し、黒人の運転手ホークをデイジーのために雇う。
早速、デイジーにホークを紹介するものの長年教師をしプライドの高いデイジーは運転手は必要ないと一蹴。事故は事実でも、年寄り扱いされたくない、運転能力がないと認めたくないらしい。

展開 毛嫌いされながらも運転手と認められたホーク

あたりのきついデイジー。そんな状況を冷静に受け止めたホーク。どんな状況でもペースを乱すことなくデイジーに接する。文句を言われながらも運転手として認められていく。
ある日、デイジーがホークの運転で墓参りに行った際、デイジーはホークが文字を読むことができないことを知る。

ユダヤ教徒ゆえ、クリスマスを嫌うデイジーだが、クリスマスの夜にホークへ『書き方読本』なる教科書をプレゼントする。
主従の関係はありながらも、ここから老いた二人の友情が育まれていく。

デイジーは“kawaii”おばあちゃん

デイジーは確かに一言で言えば “金持ち” なのだろう。とはいえ、金持ちの家に生まれ、貴婦人として悠々自適に暮らしてきたわけではない。幼い頃貧しい家庭で育ち、教師となり教鞭をとるなど自立した女性として生きてきたんだよね。自宅の調度品とかは立派なんだけど、いやらしさがないというか派手さがなくって傲慢さなんて微塵もない。
ホークに「奥様はお金持ちでいらっしゃいます」と言われ、ちょっと苛立つ表情は、なんとも“kawaii”。

ホークにアルファベットを教えるデイジー

墓参りの際、ホークが字が読めないことを知ったデイジーがアルファベットを教えるシーン。
教師であったことが目覚めたのか、ホークにアルファベットを教え、無事、文字を読み目的の墓石にたどり着いたホークを見届けた際のデイジーの満足げな顔はとても素敵。これ教師の顔だよね。
そして安心から照れ、お礼を言われると何事もなかったように、そそくさと行動するあたり、やっぱり“kawaii”。

クリスマスプレゼントは『書き方読本』

デイジーがホークにプレゼントを贈るシーン。“クリスマスプレゼントじゃない”と前置きして、“今朝、偶然出てきたの” 中から出てきたのは、『書き方読本』
“昔教室で使っていたもので、使い古しだけど” って、これ、きっと探したんだろうな。

物語終盤にデイジーが痴呆になった時に、生徒の答案がないとう騒ぎ立てるシーンがあるが、俺なら見つからなければ翌日でもなんとかできないかと考えそうなところだがデイジーの思い悩む言動を見て思ったのは、『書き方読本』は字の読めないホークのために必死になって探し出したものなんだろうって確信できちゃう。人前で必死さを出さないデイジー。汗をかき探している姿を想像すると “kawaii”。

できること、できないことを補完しあうデイジーとホーク

教師だったからといって万能なわけではない。苦手なことや、できないことだってあるだろう。でも教育って指導することで自分の成長にもなるのだろうな。
ホークが心を開き接しているのに、自分はなんだったんだろうて、言動は見せなかったけど、きっと思ったんじゃないかな。

デイジーみたいに生真面目な人なら、きっと心を閉ざした生徒とどうやって接するか思い悩んだりしたんだろう。
だから自分が心を閉ざしたことを、どこか気にしたというか恥ずかしいと思っていたのだろうね。
だって、ホークは運転手として雇われていること以上に親身になってデイジーのことを支えていたからね。
教師だったから、気まずさはあっても、自分の態度を改め向き合おうと思ったろうね。っていうか感謝の言葉は、グッとくるんだろうなって、照れ隠しのつんけんした表情は “kawaii”。

アメリカ、南部、50年代

この映画のテーマはユダヤ人の裕福な女性と黒人運転手の心の交流。そしてもうひとつが人種問題。
これ、ブログで触れるかどうか悩んだんだけど、物語を通じて人種差別に関するエピソードがちょこちょこ出てくる。
ユダヤ人が黒人を雇っていることを揶揄する白人、トイレを利用できない黒人、そしてキング牧師の演説を聞きに行くことができない白人。
映画の中ではホークがガソリンスタンドのトイレを利用できなかったエピソードしかなかったけど、かつてアメリカでは公共のバスや飲食店、宿泊施設でも人種で区分されたり、利用できないなどということがあった。

アメリカ、全土、2020年

実は同じようなことが現代でも存在している。例えば、オリンピックとかで日本人水泳選手の活躍している姿を見ることがあるけど、黒人選手って見かけないでしょ。アメリカの陸上選手は黒人ばかりなのに。理由は簡単、黒人は泳げる人が少ないから。なぜか?それはプールに入ることができないから。。黒人がプールに入ると何が起こるか?それはプールが黒く濁ってしまうから。。。
こんな歴史を知ってしまうと、アメリカという国が多様性を受け入れた自由で寛容な国とはとても思えなくなってしまう。

ネタバレ含む、あらすじに戻りラスト結末は映画史に残る名シーン

その後、痴呆にってしまったデイジー。ある日、生徒の答案用紙を失くしたと慌て、家中を探すデイジー。なんとかなだめるホーク。やっと落ち着いたデイジーはホークの手を握り一言 “you’re my best friend”
場面は変わり、雑草が生い茂ったデイジーの屋敷の前に『空き家』の看板。建物内の家具や調度品はそのまま。違うのは主が去ったこと。
そして次の場面でホークは孫娘が運転する車の助手席に座っていた。デイジーの屋敷には『SOLD』の看板。車は屋敷に駐車。隣には息子プーリーのベンツが止まっていた。

屋敷の中で二人は談笑し、デイジーのいる施設へ向かう。施設でデイジーを挟みプーリーはホークに話をすると、“ホークは私に会いに来たのよ”と叱責する。
そしてデイジーは“プーリー、看護婦と遊んできなさい”とたしなめる。
二人になったのち、ホークは“感謝祭のパイですよ”と言いデイジーにパイを勧めるが、うまく食べられないデイジー。食べるのを手伝うホーク。デイジーにパイを食べさせ二人が見つめ合う表情はなんとも美しい。
この二人の食事の場面に、うっすらと重なるように、二人の思い出でもある最初に乗った車ハドソンが緩やかに、そして滑るように走る後ろ姿が映し出されエンドクレジットへ。

「ドライビング Miss デイジー」結びと感想

アメリカの歴代の名車、エラのI love you,サッチモのkiss on fireなどハンス・ジマーによる上質な音楽、それに家電や家具調度品など、よきアメリカ文化を堪能できる映像。
使用人だからロマンスはおろか友人という間柄でもないのだが、社会的立場や差別や偏見がある中、 二人の心の交流は爽やかで心温まる感動もの。
作品も脚本もジェシカ・タンディとモーガン・フリーマンもみんなとにかく素晴らしい。

最後に映画の中でのキング牧師の演説を紹介します。
“歴史に残る最大の悲劇は、悪しき人々の過激な言葉や暴力ではなく、善良な人々の沈黙と無関心な態度です。” 

fm_TYO_w/_luv !!

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